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手紙のきれいな書き方

手紙のきれいな書き方

贈り物に添える手紙、お祝いを伝える手紙、お礼を伝える手紙、お詫びやお断り、お悔やみの手紙…。

親しい間柄の相手にはメールやSNSのメッセージで事足りるものの、いざ手紙を書かなければならなくなったとき、慌てた経験はありませんか?

今回はプロの書道家が、大人のたしなみでもある手紙の書き方のルールやマナー、心遣いに加え、きれいな文字で表現する方法を、徹底解説いたします。

大切な相手に想いを伝えることをイメージなさりながら、手紙のきれいな書き方を一緒に学んでいきましょう。

1;手紙の役割と魅力

現代のように電話やFAX、メールやSNSがない時代には、伝達手段としての手紙のやり取りが古くから重要視されていました。
礼儀を重んじる日本人にとって、手紙は書式をはじめ文体や言葉遣いなどにも細やかな心配りをしながら書いていました。
また、季節の移ろいを表す言葉を用いることで、日本ならではの季節感を楽しむ工夫もされてきました。

はがきのきれいな書き方はこちらにまとめてありますので、併せてご覧ください。



1-1;手書き文字だからこそ

人の心に強く響く手書きの文字。相手を想いながら手間をかけ、心を込めて書かれたものだからこそ、書いた人の「想い」や「温もり」までもを感じることができるのではないでしょうか。
手書き文字にはそれだけ『特別感』があり、強い印象を与えることができるのですね。

1-2;気持ちを伝えるには

心を込めて書いた文字だけでなく、紙(便箋や封筒)や筆記具、切手などの選び方一つで、相手に払う敬意や心遣いを表すことができます。また、便箋や切手で季節感を演出したり、相手の好みを選ぶこともできます。書き手の気持ちを伝えるのにさまざまな方法があると分かれば、手紙を書くことがより身近になり、楽しさも感じられることでしょう。

2;便箋と封筒、筆記具について

手紙を書く際に必要な便箋と封筒、筆記具。文具売り場にはさまざまな種類の物が並んでいますね。特に便箋と封筒は、送る手紙の内容により、何を選べば良いかが変わってきます。早速、見ていきましょう。

2-1;「上座」と「下座」

応接室や乗り物に「上座」と「下座」があるように、手紙にも「上座」と「下座」があります。便箋の半分より上を「上座」、半分より下を「下座」と言います。相手の名前は上座に、自分の名前や家族のことは下座に、それぞれ来るように配慮しましょう。

2-2;便箋の「格」と枚数の決まり

罫線の有無や柄の有無、便箋の色などにより、格式高いものからカジュアルなものまで段階があります。格式高い順に並べると、①白・罫線なし ②白・縦の罫線有り ③白・横の罫線有り ④柄入り・カラー入り…となります。

お詫び状やお悔やみの手紙、ご不幸ごとなど、失礼のあってはならない手紙には、白・罫線なしの便箋を使いましょう。
また、お悔やみなど弔事の手紙やお見舞いの手紙は「不幸が重ならないように」という意味で、一枚の便箋に収めるようにしましょう。
反対に、通常の手紙はなるべく一枚で終わらせないようにします。どうしても一枚で終わってしまう場合には、「添え紙」として何も書いていない便箋を重ねて二枚にすると良いと言われています。

2-3;封筒の種類と用途

封筒は便箋と同じシリーズで用意されていることが多いので、私は常にセットで購入するようにしています。
特に白無地の和封筒はビジネス、プライベート問わず幅広く使えるのでたいへん便利です。
封書を横向きに入れる白無地の洋封筒は幅が広いので、結婚式の招待状や案内状など、大きめのカードを入れるのに適しています。
別名クラフト封筒とも呼ばれる茶封筒は、主にビジネス文書のやり取りなどに適しています。
さまざまな色のカラー封筒や柄入りの封筒は、正式なやり取りには適さないものの、見た目がきれいなので友人や知人など親しい人への手紙なら喜ばれることでしょう。

白無地の和封筒には、裏紙のある二重のものがあります。弔事やお見舞い、結婚式のお祝いなどの手紙には、忌み言葉である「重ねる」に繋がるため不向きとなるので注意が必要です。

個人情報など中身を見られると困るような文書の場合には、裏紙のある二重の封筒を使うと良いです。

2-4;手紙を書くのにふさわしい筆記具とは

ボールペンや万年筆などが適しています。インクの色は黒かブルーブラックを用いますが、お悔やみの場合には「涙で墨が薄まった」という意味を込めて薄墨色で書くのがマナーです。

ボールペンには水性、油性、ゲルタイプ、消せるタイプなど、さまざまな種類がありますが、インクのにじみやダマを気にせずきれいに書けるという点ではゲルタイプがお勧めです。ペン先の太さは0.5~0.7mmを選ぶと安定した文字に見えます。書き慣れているなら毛筆や、毛筆風に仕上がる筆タイプのサインペンを用いるのもいいですね。

ボールペンできれいな字を書く方法はこちらにまとめてありますので、併せてご覧ください。



3;手紙の基本構成

手紙の書き方には基本のルールがあります。基本の構成に沿って、伝えたい内容をまとめていくと良いでしょう。実例は7で載せますので、ここでは文面の一連の流れを把握していきましょう。
手紙は主に「前文」「主文」「末文」の三つから構成され、日付や署名、宛名などは本文の後に「後付け」として記載します。

3-1;前文

「前文」では頭語と時候の挨拶、相手の近況伺いをして、手紙の本題を書く「主文」へと進みます。
頭語は一行目の上から書き出し、季節や気候に合った言葉を頭語の後に改行、または一文字分空けて書きます。続けて、相手の健康を気遣い、近況を尋ねる文章を添えます。
頭語については3-5で詳しく解説します。

3-2;主文

手紙で伝えたい内容になります。改行して一文字分下げて、手紙の本題を書き出します。「さて」「ところで」などの起こし言葉を用いると書き出しやすくなります。

3-3;末文

改行して一文字分下げ、相手の健康を気遣う内容を結びの挨拶としてまとめ、頭語に合った結語を用います。改行して行末から一文字分空けて書きます。
結語については3-5で詳しく解説します。

3-4;後付け

行頭から二~三文字分下げて日付を書きます。あらたまった手紙には西暦ではなく元号を用い、漢数字で書きましょう。
署名は結語と行末を揃え、フルネームで書きます。
宛名は改行して一文字分下げ、「様」などの敬称をつけて相手のフルネームを書きます。

3-5;頭語と結語

頭語と結語は、会話における「こんにちは」「さようなら」にあたる挨拶の言葉です。頭語と結語の組み合わせは決まっていて、手紙の書類や差出人の性別による使い分けや呼応関係があるため、注意と使い分けが必要となります。

一般的な手紙では頭語は「拝啓」、結語は「敬具」を用います。それぞれ「拝=つつしんで」「啓=申し上げる」、「敬=つつしんで」「具=申し上げました」…という意味です。

相手が目上の方などのときは、より丁寧な頭語「謹啓」、結語「謹白」を使います。

親しい相手や急用の場合は、頭語「前略」、結語「草々」を用います。
死亡の通知やお悔やみなどの弔事の手紙の場合は、頭語を省きます。「敬具」などの結語は使って構いません。

また、女性だけが使える頭語と結語もあります。
一般的な手紙では頭語「一筆申し上げます」、結語「かしこ」。
より丁寧な手紙のときには頭語「謹んで申し上げます」、結語「かしこ」。
前文を省略する場合は頭語「前略ごめんください」、結語「かしこ」。
急ぎの手紙のときには頭語「略儀ながら申し上げます」、結語「かしこ」。

種類も多く混同しがちですが、組み合わせごとにきちんと覚えておくといいですね。

3-6;時候の挨拶

四季の変化に富んだ日本では、季節に対する感性が磨かれています。季節の移り変わりにはとりわけ敏感で、手紙でも四季折々の情景を折り込んだ挨拶で始めるのが習わしとなっています。

一般的な手紙では、「日差しが眩しい夏がやって来ましたが、お元気ですか。」といった、季節や気候と相手の体調を絡めた挨拶文を書きます。
また、手紙の最後には、「厳しい寒さはまだまだ続きそうです。どうぞお身体に気を付けてお過ごしください。」といった、相手の健康や活躍を祈る気持ちを込めた結びの言葉を添えます。結びの言葉も時候の挨拶同様、季節や気候に合わせた内容にしましょう。

4;手紙の禁忌言葉について~使ってはいけない表現とは?~

言霊の国、日本では、ことばの持つ意味に対しとりわけ敏感なため、手紙の中でも忌み言葉を避けてきました。忌み言葉とは使ってはいけない言葉、という意味です。

【結婚のとき】;「別れる」「切れる」「去る」「離れる」…など
【出産のとき】;「流れる」 …など
【祝賀一般のとき】;「朽ちる」「古い」「乱れる」…など
【新築・開店のとき】;「火」「散る」「燃える」「倒れる」…など

【弔事のとき】;「くれぐれも」「重ね重ね」「また」「再び」「続いて」…など

また、人の名前や地名など、単語が二行にまたがる場合は改行しましょう。
言葉が割れると縁起が悪くなる「結婚」「幸福」なども同様です。

5;封筒の書き方

封筒の表面には宛名と宛先、裏面には差出人名と住所を、それぞれ書きます。宛名を書くときには宛名や宛先の文字の大きさや配置に気をつけましょう。

宛名は封筒の中央から、宛先よりも大きめに書きます。宛名から書き始める方が、全体の配置バランスを取りやすいのでお勧めです。「様」などの敬称は宛名より少し大きめに書くことで、相手を大切に想う気持ちを伝えることができます。
宛先は宛名よりやや小さめの文字で書きます。宛先が二行になる場合には、一行目より一文字分下げて書きます。

裏面の差出人名と住所は、封筒の中央の継ぎ目を中心にして、右に住所、左に氏名を書きます。手紙を書いた日付、または投函した日付を書き、封をしたら「封」、「緘」、または「〆」と書きましょう。

5-1;宛名の重要性とは

封筒の表面中央に配置する宛名は、手紙の第一印象を決めるものと言っても過言ではありません。お名前は世界に一つの、相手自身を表すもの。その大切な相手のお名前が雑な文字や小さな文字で書かれていたり、曲がっていたりしたら、手紙を受け取った相手はとても残念に感じるとともに、まだ封を開けていない手紙の内容にも期待できなくなってしまうのではないでしょうか。
宛名は単に配達されるための文字ではないことを心に留めて、丁寧に書きましょう。

5-2;「様」「殿」「御中」「各位」敬称の違いを理解する

相手の名前の後にどのような敬称をつけるかは、相手の地位や送る側の立場などによって異なります。

「様」;最も一般的な敬称です。相手が目上、同輩、目下、男女に関係なく使えます。
「殿」;公文書やビジネス文など、改まった形で相手に手紙を出す場合に用います。また、父親が自分の子どもに出すときにも「殿」を使うのが一般的です。
「御中」;相手が個人ではなく、会社や団体などの場合に使います。「その組織・団体のどなたかに」という意味です。
「各位」;相手が個人ではなく、複数の人に出す場合に用います。

5-3;「脇付け」とは

手紙を受け取る人に「様」「殿」などを付ける他に、更に敬意を表して書き添えることもあります。これを「脇付け」と言います。

「侍史」;おそばにいる人を通じて、という意味。
「机下」;相手の机の下から差し出す、という意味。
「御前」「御許に」;お手元に、という意味。

5-4;「封」の意味

封をしたら「封」「緘」「〆」などと書きます。これは「封をする」という意味以外にも『結界を張る』という意味も含まれます。大切な手紙の入った封筒の中に、外の汚れを持ち込まない、ということです。慶事の手紙では「寿」「賀」と書くこともあります。
「〆」」はカタカナの「メ」とは異なります。書き方には注意しましょう。

5-5;「親展」とは

手紙を受け取り人自身に開封して欲しいとき、封筒表の左下側に赤字で『親展』と書きます。
「親」;自ら 「展」;開いてください …という意味です。

6;きれいに書くコツ

ここまで手紙の色々なルールやマナーを解説してきましたが、ここでは実際に便箋や封筒にきれいに書くための三つのコツをお伝えします。
きれいな文字の書き方はこちらのコラムにまとめてありますので、併せてご覧ください。







6-1;文字の大きさを意識する

ひらがな、カタカナ、漢字。日本語はこの三種類の文字をそれぞれ使いこなしながら表記します。
ひらがなやカタカナは画数が少ないためやや小さめに、漢字はやや大きめに書くと全体の見栄えが良くなります。活字は全て同じ大きさですが、手書き文字は文字の大きさを意識して変えることで、変化を表現できます。特に漢字は幅広い画数の文字があるので、臨機応変に対応できるといいですね。

6-2;中心を揃えて書く

一文字の中心を揃えることはもちろん大切ですが、縦書き、横書きともに、書き連ねる文字の中心が曲がらないよう、全体の中心を揃えて書くことも大切です。罫線入りの便箋のときには、行の幅いっぱいに書くのではなく、両サイドに余裕を持たせるとスッキリとした仕上がりになります。
罫線なしの便箋にはたいてい、下に敷いて罫線の目安とできる用紙が添付されているので、そちらを活用しましょう。

中心を揃えるのがなかなかできない、書いているうちにどうしても文字が曲がってしまう、という場合には、それぞれの文字の一画目はどこから書き始めるのか?を常に意識しながら書くことをお勧めします。

6-3;行頭を揃えて書く

せっかく中心を揃えて書いても、改行するたびに行頭の文字の位置がずれてしまっては落ち着きのない印象になりかねません。一文字分、または数文字分下げて書く場合以外には、行頭のそれぞれの文字も揃えて書くように意識しましょう。改行するたびに、隣の文字の位置を確認しながら書くようにすれば、ずれる心配も減ることと思います。

7;手紙の実例

ここまで便箋や封筒の解説や手紙の構成、きれいに見える書き方などの理論をまとめてきました。
7ではこれらを踏まえて書いた実例をご紹介いたします。実際に書かれた手紙をご覧いただくと、どれもイメージしやすいことと思います。頭語や結語、時候の挨拶を変えれば応用も効きますので、ご参考になさってください。

7-1;実例①便箋 罫線なし・縦書き

罫線なしの便箋に、縦書き、行書で書きました。使用したのは筆タイプの黒のサインペンです。

頭語は「謹啓」、結語は「謹白」。
季節は「春」。
脇付けは「御許に」。

書道の恩師に高校の書道講師としての勤務が決まった旨の報告の手紙、をイメージした内容です。

7-2;実例②便箋 罫線あり・縦書き

罫線ありの便箋に、縦書き、行書で書きました。使用したのはゲルタイプのボールペン、インクの色はブルーブラック、ペン先の太さは0.5mmです。

頭語は「拝啓」、結語は「敬具」。
季節は「秋」。

知人のお嬢様が絵画展に入賞したのでお祝いを伝える手紙、をイメージした内容です。

7-3;実例③便箋 罫線あり・横書き

罫線ありの便箋に、横書き、楷書で書きました。使用したのはゲルタイプのボールペン、インクの色はブラック、ペン先の太さは0.5mmです。

頭語は「前略ごめんください」、結語は「かしこ」。

怪我をした先輩へのお見舞いの手紙、をイメージした内容です。

7-4;実例④便箋 柄入り・横書き

柄入りの便箋に、縦書き、行書で書きました。使用したのはゲルタイプのボールペン、インクの色はブラック、ペン先の太さは0.4mmです。

頭語は「前略」、結語は「草々」。

国家試験を目前にした後輩に合格祈願のお守りを贈り応援の気持ちを伝える手紙、をイメージした内容です。

7-5;実例⑤封筒・縦書き

縦書きの封筒の表面と裏面です。
表面に使用したのはゲルタイプのボールペン、インクの色はブラック、ペン先の太さは1.0mm。
裏面には同じ種類の0.7mmを使いました。

*宛先の住所は架空のものです。

7-6;実例⑥封筒・横書き

横書きの封筒の表面と裏面です。
表面に使用したのはゲルタイプのボールペン、インクの色はブラック、ペン先の太さは0.7mm。
裏面には同じ種類の0.5mmを使いました。

*宛先の住所は架空のものです。

8;一筆箋で手紙をもっと身近に

ちょっとしたプレゼントをするときや、お借りした物を返すとき、仕事の請求書や書類を送付するときなど、「便箋に長々と手紙を書くほどではないけれど、一言二言のメッセージを手書きで添えたい」という場面も、日常生活では多々あることと思います。
手紙を書くのは面倒だからと何の言葉もなく物だけ送ったり返したりするのは、味気ないイメージですよね。

このようなときには、きれいな一筆箋に一言添えると、「心遣いのできる人だな」「丁寧な人だな」と印象がアップし、お相手とのご縁がより深まっていくことでしょう。

一筆箋の書き方には特に決まりごとはありませんが、一枚で収めるようにするのがマナーです。二枚、三枚と長くなるようなら、便箋を使いましょう。
頭語や結語、時候の挨拶などは不要です。絵柄が入っている場合には、文字がかからないように書きましょう。

短い挨拶やメッセージを伝えることができる一筆箋、ぜひ使いこなしてくださいね。

9;おわりに

いかがでしたでしょうか?いざという時にも慌てることなく手紙を書くことができる、品格ある大人でありたいものですね。
今回提示した以外にも、頭語と結語や時候の挨拶にはさまざまな表現があり、学ぶほどに手紙の奥深さを実感します。

手紙のきれいな書き方を「知識」として学んでも、いざご自身で書いてみると、なかなか思い通りには書けないことと思います。

【和みの書 奈津 美文字教室】では、きれいな字の書き方をしっかりと学んだ後に、手紙をきれいに書けるようにレッスンしてまいります。
基本的な手紙の書き方を学ぶだけでなく、実際に便箋に体裁良く書けるような実践練習を行います。お一人お一人のクセを見抜いて最大限に生かすことで、無理なく見栄えの良い仕上がりを目指すことができる、きめ細やかなマンツーマンレッスンです。

体験レッスンも随時開催いたしておりますので、是非お気軽にお問い合わせ、お申込みくださいませ。



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